首都直下地震

関東大震災が発生してから、2023年9月1日の午前11時58分で100年目となります。

〇関東大震災(吉村昭 文藝春秋)より   
大正12年9月1日午前11時54分-関東大震災。関東地方では、低気圧が北陸方面から本州を通過して金華山沖に向かい、秩父地方でも副低気圧が発生していた。  
風向きは南または南東で、場所によっては時折風をまじえた驟雨が見舞っていたが、それも午前10時ごろにはおさまった。湿気が多く、空は雲におおわれ蒸し暑かった。

その日、秋のさきがけとなる二期会の招待展覧会が上野美術館で開かれていた。街にはカンカン帽をかぶった男が歩き人力車が往き交っていた。正午近くなったので、各家々では竈(かまど)や七輪に火をおこして昼食の支度をはじめ、町の飲食店にも客の出入りが目につくようになっていた。午前11時58分44秒、東京市内に設置されていた中央気象台と本郷の東大地震学教室の地震計の針が、突然生き物のように動きはじめた。

 それは、比較的ゆるやかなもので、係員は椅子に座ったまま記録紙の上に線をえがく針の動きを見つめていた。 しかし、緩慢だったのは5秒ほどで、針はにわかに急激な動きをしめすようになり、係員も思わず顔色をかえて椅子から立ち上がった。建物がはね上がるように揺れ、頭上では瓦の落下する音が起こりはじめた。本格的な烈震はその後にやってきた。・・・・


首都直下地震:
 首都およびその周辺地域の直下に震源域を持つ地震には、M7クラスの地震と、フィリピン海プレートと北米プレートの境界で発生する海溝型のM8クラスの地震があります。

 首都直下地震モデル検討会においては、これらを総称して「首都直下地震」と呼んでいます。 陸域で発生する浅い地震の規模は、海溝付近で発生する巨大地震に比べて小さいことが多いですが、地震が発生する場所が浅いために直上では揺れが大きくなりやすく、そこに住宅地がある場合は、マグニチュード6~7程度でも大きな被害をもたらすことがあります。 

 なお、一般的に「直下型地震」は、都市部などの直下で発生する地震で大きな被害をもたらすものを指すことが多いようですが、その発生メカニズムは多様であるため、特別の性質を持った地震の一種として定義される地震はありません。(気象庁ホームページより)
 
◎南海トラフの地震:
 周期はおおむね100年から150年という歴史があり、既に安政の地震から160年以上経過しており紀伊半島地方に地震が発生すると南海トラフとの地震の関係が心配されます

◎関東大震災の埼玉県の震度

下記の図は、関東大震災の大宮台地と周辺の中川低地と荒川低地の震度分布ずであります。
大宮台地等の台地は震度5、中川低地や荒川低地は震度6-、震度6+、震度7であります。

◎埼玉県の過去の被害地震

埼玉県において過去のはつきりした被害地震の記録は次の3つであります
〇関東大地震1923年(大正12年)9月1日M=7.9
埼玉県では、死者・行方不明 約400名、家屋の全半壊が約1700戸。
特に被害の多かった所は、春日部、越谷、草加、川口等の元荒川・古利根川の沖積層上でありました。

〇西埼玉地震 1931年(昭和 6年)9月21日M=6.7
震源地:櫛挽台地中央(北緯36.15,東経139.24)の浅いところで、深谷と寄居の中間にあり、約5万年前にできた台地です。
台地の南の低い方の台地を御稜威原段丘といい2万年前にできた台地です。

櫛挽台地は荒川の古い扇状地で地層の10~15cmが砂利で、その上に浅間山などの噴火した火山灰が1~2mあり、水をよく通すので土地は乾燥しています。
被害:埼玉県の各地は震度5の強震にみまわれ家屋の全壊、半壊、井戸水の混濁、噴砂現象、地すべり、土地の陥没などがあり、妻沼、児玉、行田、熊谷、久喜、白岡、吹上、深谷、菖蒲の市町村において目立ちました。

これらの被害地域は綾瀬川、元荒川の上流地域にあり、川の氾らん地帯で沖積層が最も厚く堆積しているところです。
地盤のしつかりした洪積層の大宮台地や武蔵野台地では大きな被害がなかったといわれています。

〇埼玉県中部地震1968年(昭和43年)7月1日M=6.1
震源地は、比企郡玉川村附近 深さ52km、M.6.1

また、明治以前の地震にっいては,ほとんど記録が残されておりませんが、次の3つが明らかにされています

〇安政江戸地震1855年(安政2年)
幸手付近の詳しい被害集計が発見され,かなりの被害があったことが明らかにされました。

〇東京地震1894年(明治27年)6月20日
東京市内で死者173名,鳩ケ谷,川ロでは土蔵や家屋の破損が数十棟あり、越ケ谷・菖蒲・鴻巣では噴砂や地割れが著しくありました。

〇霞ケ浦地震1895年(明治28年)1月18日
東京の下町と埼玉県東部の沖積層地(岩槻,越ケ谷,春日部,草加)において被害が目立ち、埼玉県下の家屋の破損210棟と報告されています。また、噴砂や地割れは浦和、岩槻あたりでひどかったと言われております。

◎埼玉県の活断層について

参考文献「埼玉県の地震危険」岩間保険事務所 所長岩間文雄1981年(昭和56年)作成PDF資料

〇綾瀬川断層

〇深谷断層